高齢者の自立を支えるトイレ介助

介護の仕事で誤解されがちなのが、トイレ介助だ。介護職において排泄ケアとは、オムツ交換だけではない。意識がはっきりしている高齢者の場合は、トイレに連れて行くことも排泄ケアなのだ。排泄物が下着の中でいつまでもくっついている状態を、少し考えてみて欲しい。お漏らしの不快感は想像するまでもないだろう。この不快感を感じないほど、どんなこともわからない状態になってしまう人もいる。オムツの使用は、認知症も誘発するのである。

介護士としては、高齢者にできるだけ自らの力でトイレに行ってもらうことが何より大切だ。もちろん歩けない高齢者は車椅子で連れていく。実は、トイレ介助はそんなに難しいことではない。何かにつかまって数十秒立った状態でいられる高齢者なら、介護士がズボンの上げ下ろしをするだけで排泄可能だ。また、尿意や便意があれば、認知症などでそのことを訴えられない高齢者でも、落ち着かない様子などを周囲の人や介護士が察知してトイレへ連れて行くことができる。

介護士は、高齢者が自分でトイレに行けるよう、いろいろな工夫をするといいだろう。何とか歩くことができるなら、壁に手すりを取り付けることで工夫できる。歩けなくても、立てるなら手すり等につかまって車椅子に乗ってもらい、トイレに連れて行く。這ってトイレに行ってもいいのだ。自力で移動できるのなら、それは立派な自立である。高齢者が一人でできないことは支え、できることはやってもらう。そんな当たり前の生活を作り出すのが、トイレ介助の仕事なのだ。